最新IT政策からライフスタイル、食文化…世界で類を見ない国「エストニア」を知る!

前回、「エストニア」という国をまずは体感してもらえたらと、都内で催されているフェアやイベント情報をご紹介しました。(前回記事はこちら

「エストニア」の魅力は色々あり過ぎて、知れば知るほど絞り込むのが難しいので、今回は私が気になっていることをピックアップして簡潔にお伝えしようと思います。世界中で注目されている電子国家政策や「デジタルノマド・ビザ」についても極力わかりやすく説明しつつ、かまる新聞としては、醸造関係や食、ハーブや伝承薬、そしてサウナ文化などにフォーカス。デジタルと自然、そして健康に関することが共存する、世界でも類を見ない国「エストニア」へ、ぜひトリップしてみてください。

IT先進国「エストニア共和国」が生まれた理由

バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の中で最北に位置し、東はロシアと国境を接していて、西はバルト海とフィンランド湾に面したエストニア共和国。

地勢的にデンマーク、ドイツ騎士団、スウェーデン、ロシア帝国、ソビエト連邦、ナチス・ドイツなどから歴史上様々な支配と影響を受け、独自の進化をしてきています。

現在では、EU(欧州連合)にもNATO(北大西洋条約機構)にも加盟していますが、独立前まではソビエト連邦を構成する15の共和国の一つでした。そのため、1991年の独立にあたり新政府は、仮に再びロシア等に占領されても機能する強力な行政システムを作り上げることを目指し、それが、IT先進国家「エストニア」実現の大きな要因です。「Skype」が実質エストニアの企業で、その出身者による新たなIT企業がグローバルで活躍しているのも、「エストニア」という国がエンジニア等の人材育成をいち早く取り組んでいたからです。

世界が注目する「デジタル・ノマド・ビザ」

とにかく「エストニア」ではあらゆる手続きがネットでできてしまうため、実際経験した人から聞くと、本当に便利だそうです。そして、政府が「e-residency(電子居住)」を推進していることも以前から話題になっていました。このあたりの事情に関しては、「ブロックチェーン、AIで先を行く エストニア で見つけた」という書籍にとても詳しく解説・レポートされていますのでご参考に。

また、この書籍でも政府の構想として語られていた「デジタル・ノマド・ビザ」が、コロナ禍の2020年8月に発給開始というニュースが世界を駆け巡りました。ノマドワーカー・リモートワーカーを対象としたこのビザは、国内で地方移住してリモートワークをするのと同じように、「エストニア」へ移住して仕事をすることが可能になるという画期的なもの

前述したように、エストニアはEU加盟国、通貨はユーロですし、このビザを取得すれば最大で1年間、リモートワークができてしまいます。他では、カリブ海のバルバドス島やバミューダ島でも同様のプログラムが始まっていますが、この「デジタル・ノマド・ビザ」はヨーロッパ圏というのが最大のポイントです。

ITと自然が共存するエストニアのライフスタイル

物価が比較的安い中で、北欧や西欧の雰囲気を手軽に感じられることも「エストニア」の魅力の一つです。もちろんキャッシュレス化も進んでいて、それでいて美しい自然に囲まれながらゆったりとした生活を過ごせます。そんな移住先の選択肢の一つにもなるかもしれない「エストニア」、どんな気候やライフスタイルなのかが気になりますよね。

「エストニア」は特に夏が快適で、日中が20度前後と過ごしやすく、夏至近くになると日没が23時頃と日照時間が長いです。首都タリンであっても、車を15分も走らせれば森やビーチに行くことができるため、アウトドアのアクティビティを満喫できるそう。

日本において、蒸し暑い夏は北海道などで過ごす人が増えていますよね。「エストニア」で夏の時期を避暑地的に活用するのは、その感覚に近いのかもしれません。

厳しい冬だからこそのサウナライフ

対して冬は、マイナス10度以上にもなるため厳しい気候です。

そこで発達しているのがサウナ文化です。日本ではフィンランドサウナが有名で、今またブームとなっていますが、「エストニア」では生活と健康、もっといえば人生に必須な存在です。移住者や観光客が利用できるサウナも充実していますが、多くの家庭には手作りのサウナハウスがあります。日常的なサウナでは日々の入浴の他に、料理を行う場にもなるそうで、中でも伝統的なハーブサウナやスモークサウナ(UNESCO無形文化遺産に登録されている地方もあります)は文化ともいえる存在です。さらに神聖なサウナというものもあり、そこでは出産や看取りまでが行われているとのこと。

また、若者を中心とした新しいスタイルのサウナ文化もアクティブです。ドイツ車のアウディを改造してサウナカーとした「SaunAudi」というプロジェクト活動をしているチームや、サウナとDJなどがミックスしたイベントなども開催されています。

ホリスティックな食文化とヨーロッパ最古の薬局

食文化に関しては、ドイツ料理やスウェーデン料理などの影響を色濃く受けています。そういった中、私が現地へ行ったら必ず味わいたいと思っているのが、ハーブとキノコです。ハーブは、エストニア料理やハーブティー、オーガニックコスメ、そしてハーブサウナなどなど、日々欠かせないもので、多くの家庭でも育てています。エストニア人は、ハーブを薬だけでなく、悪魔・幽霊などから身を守るものとして考えていたそうです。

そういった意識が古くからあるためか、ヨーロッパ最古の薬局が現存していて、スパイスやハーブが特徴的な製品なども購入することができます。それが、タリン旧市街の中心をなすラエコヤ広場に面して立つ市議会薬局(Raeapteek)」です。ロシアの皇帝も薬を注文していたそうで、8種類のスパイスが入ったクラレットワイン「長寿のワイン」と、「失恋の治療薬」が有名です。アーモンドが72%、残りの成分は秘密という「失恋の治療薬」は、薬といいながらもどちらかというとお菓子のようなもの。中世の時代から失恋の苦しみを癒す薬として処方され続けていて、色々な意味で必ず行ってみたい薬局です。

さて、キノコについてはあまり情報がないのですが、シーズンにはキノコ狩りがカジュアルに楽しまれているくらいポピュラーだそうです。私がずっと気になっているのは食用というよりも民間療法薬のようなもので、「チャーガ」という白樺に自生するキノコです。日本語ではカバノアナタケと呼ばれていて、坑がん作用の他、免疫力強化もしくは調整作用、糖尿病・高血圧の予防と改善作用などが期待されています。日本ではあまり知られていませんが、コロナ禍で「チャーガ」を筆頭に北欧やロシアのスーパーフードは今後きっと注目されることでしょう。

ビール、ウォッカ、シードル…お酒も充実

また氷点下が続く冬の気候ゆえに、ワインのためのぶどう栽培には向きませんが、ビールやウォッカ、シードルなどの醸造が盛んで、エストニア産のお酒から周辺国との歴史も知ることもできて面白いです。

国内で一番飲まれているのはビールで、これはドイツやデンマークの影響。「サクビール」「ア・ル・コックビール」が大手2ブランドで、それ以外に各地のクラフトビールも豊富です。毎年5月にはバルト海で最大級の規模を誇る国際的クラフトビール祭りが催されていたりも。

また、ウォッカはかつてはかなりの生産シェアを占めていて、それはソ連へ供給していたため。

現地カフェやレストランで定番の「ヴァナ・タリン」というリキュールもありますよ。ホワイトラムに、バニラ、オレンジ、シナモン等を漬けこんでエストニア産の樽で熟成させたもので、甘くて強い名酒です。

そして今注目なのがりんごから醸造される発泡酒、シードルです。日本でも信州や青森などのクラフトシードルが盛り上がっていますが、エストニア産のオーガニックシードルは要チェックです。こだわりのりんごとシードルを追いかけているかまる新聞としては、この「ヤーニハンソ・シードル」に関して来週詳しく特集いたします。

私が「エストニア」で気になることを今回つづってみましたが、いかがでしたでしょうか。少しでも興味がわいた方には、先日開催されたバルト海三国のイベントのナビゲーターもつとめた「エストニア料理屋さん」、エストニア愛があふれていてオススメです。

移住やリモートワークは現実的ではない人がほとんどだと思いますが、来年以降の旅行再開を期待しながらのヴァーチャル旅、かなり楽しめる国です!

エストニア国旗
最新情報をチェックしよう!