東京谷中の銭湯が現代美術のギャラリーになった、というニュースを最初に聞いてわくわくしたのは、もう20年以上前になります。確かに、天井が高くてあんなに広い空間が街中にあったら色々活用したくなるよなあ、と当時思いました。
そして今、銭湯として内装デザインや設備・サービスをリニューアルするところと、銭湯としての歴史は閉じながらその空間を活かして新しい業態に生まれ変わるという、両方のパターンが話題になっています。そこで今回は後者に注目し、銭湯空間を活かして全く別ジャンルのスペースに再生したケースをご紹介したいと思います。
銭湯の街、北千住の複合アートスペース「BUoY」
東京の北千住は、京都とはまた違った意味で全国の銭湯マニアによく知られている街です。聖地ともいわれているレトロな銭湯も現存していて、最近では大学キャンパスが増えたことで学生が利用する姿も見かけられるようになりました。そんな北千住にある元銭湯のスペースも、やはり超個性的。
「BUoY(ブイ)」は、演劇やライブ、アート表現にたずさわる人たちの高い支持を得ています。古いビルの地下1階あるそのスペースは、クラウドファンディングで多くの人からのサポートも受け、2017年に誕生。20年以上も廃墟だった物件をリノベーションした複合アートスペースです。
銭湯だった地下は、風呂の一部を残した形で劇場に、ボウリング場だったフロアには、ダンス・演劇の稽古場やスタジオのほか、一般の方も利用できるカフェもあります。東京芸術大学の千住キャンパスから約1kmほどに立地していて、このエリア全体が面白くなってきている中での、カルチャー発信拠点となっています。
銭湯空間プレイバックの先駆け!谷中「SCAI THE BATHHOUSE」
谷根千と称されている地域も昔から銭湯が多いところで、路地を歩くのがとにかく楽しい街です。最初に書いた現代美術ギャラリーは、「SCAI THE BATHHOUSE(スカイ ザ バスハウス)」で、こちらは谷中の東京芸術大学キャンパス近くにあります。
200年の歴史を持つ銭湯「柏湯」を改装、外観は当時の面影を残しつつ、風情があってモダンなギャラリー空間になっています。銭湯をアートスペースにしたレジェンド的な存在ですので、そういう視点で建物を眺めるのも楽しいかもしれません。
根津駅すぐにも銭湯再活用の新ショップが誕生予定
谷根千とは、谷中と根津と千駄木を中心としたエリアのことなのですが、根津駅すぐ近くでも数年前まで「宮の湯」という銭湯が営業を続けていました。そこが、2020年10月までの期間限定でアートスペース「芸術劇場+Cafe-宮の湯」となっていたことは、ご存知の方も多いかと思います。
次はどうなるのかと気になっていたところ、谷根千と縁の深いショップがその一部に移転してオープンするという情報を得ました。それが、「亀の子束子 谷中店」です。千駄木駅寄りの細い道沿いにある今の小さな店舗もかなり素敵ですが、今度は、一朝一夕には醸し出せない元銭湯の空間をリノベして、おしゃれに製品が並ぶそう。お店の出来上がりに期待が高まりますね。開店は、2020年11月28日の予定です。
散策のあとは「朝日湯」でゆったり寛ぎの時間を
また、谷根千エリアには「朝日湯」が現役でバリバリ営業していますので、そのこともお伝えしておきます。千駄木駅を出て100mほどの、「すし乃池」の向かい。
二股温泉や奥飛騨温泉など日替わりの薬湯が人気で、これからの季節は、溶岩浴やよもぎ蒸風呂などでのお手軽温活にも。なお、「朝日湯」を使った新しいサービスについては以前の記事でも少しご紹介しています。(記事はこちら)