式場隆三郎という人物をご存知でしょうか。私もそれほど詳しくは知らなかったのですが、式場隆三郎の「腦室反射鏡」という展覧会が練馬区立美術館で催されているという情報を知り行ってみたところ、かまる新聞のテーマにつながる発見も色々ありました。
また、この美術館のある中村橋駅の貫井というエリアには「貫井浴場」という銭湯があることと、隣の富士見台駅すぐ近くには出色の中国料理店もあります!
ということで今回は、今だからこそ注目されるべき式場隆三郎の魅力をお伝えつつ、東京での展示会場である練馬区立美術館の近辺をぶらりしてみました。
多彩な活躍をした精神科医、式場隆三郎とは
式場隆三郎は、精神科医で医学博士でありながら、事業家の顔ももち、今でいうところの出版プロデューサーや芸術家のプロデューサーともいえる稀有な人物です。そのマルチな各活動が、私の頭の中で今ひとつつながっていなかったのですが、今回の展覧会を見て色々クリアになりました。
まずわかりやすいのは、放浪の画家、山下清の才能を見い出し活動を支えたことや、草間彌生の最初期に彼女の才能を感じとり、東京での最初の本格的展覧会をサポートしたことでしょうか。
山下清は、彼が千葉県の知的障害児施設に入園していた時、顧問医だった式場隆三郎の目に止まり、指導を受けることで才能がさらに開花していったんだそうです。日本のゴッホと称された彼は、1961年には式場らと一緒に約40日間のヨーロッパ旅行に出かけ、各地の名所を描いた作品が残っています。また、山下清は晩年は練馬に住んでいたそうで、今回の展覧会が練馬区立美術館で開催されているのはそんな縁も感じますね。
日本におけるゴッホブームの立役者?
式場隆三郎は、文芸や芸術創造活動と人の精神的な問題に関心を持ち続けた人物です。精神科医としてゴッホについて著した書籍も多いのですが、ゴッホの研究家というだけでなく、日本におけるブームをつくったプロデューサー的存在の1人でもあるように感じました。今の美術展では当たり前になっている展示作家作品によるミュージアムグッズですが、当時彼はゴッホ作品で浴衣などを展開していたのですから。そういった先進性やセンス、そして精神科医で事業家であるゆえの、ちょっと不可思議で且つ社会的な彼の生きざまを、「腦室反射鏡」では堪能できます。
柳宗悦や民芸運動にかかわる人たち、そしてバーナード・リーチなどとの交流の様子や関係する各作品も見どころは多いですよ。三島由紀夫との書簡も展示されています。
〈式場隆三郎 腦室反射鏡〉
会期:10月11日(日)~12月6日(日)
休館日:月曜日※11月23日(月・祝)は開館、翌24日(火)は休館
開館時間:午前10時~午後6時※入館は午後5時30分まで
観覧料:一般1,000円
詳しくは公式サイトへ
他にも興味深い活動が多い式場隆三郎
千葉県市川市にある、とても画期的な精神病院の設立者で、精神病理学者の式場隆三郎は、芸術とは直接関係ないテーマでも興味深い著作を数々残しています。江東区の深川に建てられた怪建築「二笑亭」についての記録「二笑亭綺譚」は、内容もすごいですが装幀が素晴らしく、その後、何度か復刊もされています。
また、「絶対安眠法」とか「式場博士の脳力集中・休養法」なんて書籍もあり、今読んでもとても面白いものです。弟が編集者のため、出版社を経営していたらしいことや、医師ならではの想いを反映させたホテルを伊豆に設立していたことも、今回初めて知りました。
富士見台駅で訪れたい創作中華料理「源烹輪」
練馬区立美術館がある、西武池袋線の中村橋駅から徒歩圏内で食事をする場合に一番オススメのお店が「源烹輪(ゲンポウリン)」です。隣の富士見台駅南口の商店街にさりげなく在るその外観は、一瞬中華店なのかどうかわからない佇まい。山東省・河北省・広東省の料理をベースに日本流にアレンジをしているようで、食材の組み合わせ方や調味料の使い方が珍しく、メニュー内容が楽しいためなかなか注文を決められませんでした。
今回はランチメニューの中から、「おろし山芋と黃瓜・筋子の紹興酒醤油漬のせ和え麺」と「フカヒレと豆腐の醤油土鍋煮」をオーダー。和え麺は、他では味わえないオリジナル中華という感じで、期待を裏切らない美味しさでした。
土鍋煮ももちろん絶品で、ちょい濃い目の味なのでお酒が飲みたくなって困ったくらい。
そしてお伝えしておきたいのが、店内の内装と音楽。土壁みたいな質感と色にアンティーク的な家具や照明、流れている音楽がさらにその独特な世界観を高めてくれます。私がいた時はシャルル・アズナブールなどのフランスの古い曲がながれていて、超はまってしまいました♫
こちらの素敵なところは、テイクアウトにも積極的なところ。ほとんどのメニューは対応可能とのことで、店内には、すぐ買っていけるものも用意されています。これらはお手頃な値段でリピーターも多そうな感じでしたよ。私も、「茄子とピーマンの青唐辛子ピリ辛炒め」を購入して帰りました!
美術館の後に銭湯でリフレッシュもオススメ
練馬区は、足立区や大田区に続いてレトロな銭湯が残っているため、機会があれば行きたいと思っていました。中でも「貫井浴場」には、お風呂をあがってからビールなどが飲めたり、酒の肴だけでなく定食も充実しているお店が番台の横で営業しているという噂を聞いていて、遂にチャンス到来です。
小さな宴会場と食堂がミックスしたようなそのお店は、どうやら夕方前くらいから開くようで、私含め皆さんが風呂あがりのビールで極楽気分。グループでのお風呂+飲み会という企画も楽しめそうです。
庶民的な銭湯ですが、ビルに改装されてきれいですし、露天風呂は漢方湯だったり、内湯にはラドン浴など10種以上のお風呂がある充実ぶりですよ。
〈貫井浴場〉
所在地:練馬区貫井2-20-16
電話:03-3970-4126
営業時間:15:00 – 24:00※定休日は毎週月曜(祝日は翌日休)
練馬区立美術館や貫井浴場のある貫井という地名は、昔、弘法大師がこの地をおとずれ水不足に苦しむ村民の姿を見て、杖で大地を突いて泉が湧き出したことが由来だそうです。湧き水でできたこの池が号となっている南池山貫井寺円光院へ貫井浴場から散歩してみたところ、弘法大師の像がありました。
式場隆三郎の「腦室反射鏡」、派手な展覧会ではありませんが、面白い企画です。深川や市川、最近温泉目的で行った伊豆など、個人的に妙にはまることが多かったこともあるのですが。芸術家の作品展とは異なるので、こういった内容の時は、今回の練馬ぶらり旅みたいに別のことと組み合わせて楽しんでいます。