今はあまり感じにくいですが、水の都でもあった江戸の街。東京となった現在、隅田川を中心とした東京東エリアでは、川の魅力を活かした取り組みがいくつか進んでいます。
今回は、川沿いにあるレストランやカフェなどのテラス設置・活用を推進する「かわてらす」について詳しく説明をしながら、リバーサイドの気持ちよさを体感できるスペースをご紹介していきます。
また、船の待合室とテラスデッキがつい先ごろお披露目された「両国リバーセンター」の最新情報や、江戸の川への想いを憩いの場とした京橋のあまり知られていない取り組みについてもお伝えしたいと思います。
なお、前回は八丁堀・茅場町を流れる亀島川に注目してリバーサイドのお店などをご紹介していますので、そちらもご覧ください。
水辺から東京の魅力を発信!かわてらすとは?
「かわてらす」とは、夏の京都などでよく見られる「川床」(河川に突き出して設けた飲食などのためのテラス状の造作)の東京版、といったらわかりやすいでしょうか。水辺の魅力向上と地域活性化を目的とし、東京都建設局が「かわてらす」の対象となるエリアを定めていて、浅草(桜橋付近~厩橋付近)、両国(蔵前橋付近~首都高速両国JCT付近)、越中島(永代橋付近~佃大橋又は相生橋付近)、築地(佃大橋付近~築地大橋付近)、深川(清洲橋~隅田川大橋・左岸)となっています。
東京の東エリアに住んで長い人でないとどの辺りかぴんとこないかもしれませんが、かなり広範囲が対象です。なお、この指定エリア外(隅田川以外も含む)で「かわてらす」を実施したいという希望についても、東京都は個別相談に応じているそうです。
贅沢な川辺の時間を楽しむ「LYURO 東京清澄」
さて具体的には、2013年から隅田川および日本橋川の一部区間を対象として水辺エリアの民間活用の社会実験が行われてきていて、その一つが「LYURO 東京清澄―THE SHARE HOTELS―」のテラスデッキ活用です。
2017年4月のオープン以来、2階にある「PITMANS」のテラス空間の気持ちよさと、醸造所まで構えたクラフトビールの充実さやモーニングセットを目当てに、多くの人が訪れメディアでも大評判。隅田川を望む景観はたまらない開放感で、スカイツリーも見えて、昼間もサンセットの時も、そしてナイトタイムも、時間を忘れてしまいます。
もちろん、ホテルとしての機能とデザイン性にもこだわりとセンスがつまっていますので、東京を旅行する際に泊まる選択としても◎。
老舗割烹で風情ある川床を「割烹金柳」
2019年に始動した「深川川床」も、「かわてらす」のプロジェクトの一つです。
江東区において20年以上水辺の活動をしてきた「NPO法人江東区の水辺に親しむ会」が川床設置者で、 大横川沿いに大正時代からたたずむ「割烹金柳」に川床が設置されました。深川情緒を色濃く残した、今では数少ない歴史ある割烹料理店で、2019年3月にはテラスでの桜を見ながらの優雅なオープニングの宴が催されています。
ただ、今年は、新型コロナの拡散を考えて川床の営業は中止となっていて、大変残念です。
ご紹介した2店舗以外の「かわてらす」が設置されたスポットは、現時点では、蔵前駅にも近い隅田川沿いの飲み食い処「ボン花火」、さらに浅草寄りにあるフレンチレストラン「ナベノイズム」があります。
東京東エリア最新施設「両国リバーセンター」
両国国技館向かいの隅田川沿いにすでに建物は完成した、舟の運行拠点として東京都が整備を進めている「両国リバーセンター」。2020年8月22日に発着場のテラススペースと船の待合室が先行オープンしました。
このセンターは、中核施設となるザ・ゲートホテル両国(2階~9階)と東京ウォータウェイズが運営するカフェ(1階)、墨田区の子育て施設(1階・2階)、そして船の待合室(2階)から構成され、施設全てが開業するのは2020年11月を予定しているそうです。国技館だけでなく、旧安田庭園や刀剣博物館、そして江戸東京博物館も集まっているエリアなので、歴史・文化に関する観光巡りの拠点スペースにばっちり。また、災害時に物資輸送等の中継拠点として活用することも計画されていて、都民としては安心できてすごく嬉しいですね。
いにしえを感じる「京橋大根河岸おもてなしの庭」
ここまでご紹介したお店や取り組みとは少し異なりますが、1959年に埋め立てられた歴史ある京橋川の跡地に設けられた「京橋大根河岸おもてなしの庭」のことも是非知ってもらいたいです。
銀座線京橋駅出口から銀座方面に向かったところにあるこの空間は、京橋川の河岸に設けられた青物市場として、かつて栄え親しまれた場所。「NPO法人京橋川再生の会」のプランが、2015年・環境デザイン賞の第1回「おもてなしの庭」大賞を受賞し、地域の人たちの想いが集結し2017年春にこの小さなオアシスが完成しました。
見過ごしてしまいそうなスペースではありますが、都会のど真ん中で江戸時代の水路と河岸を思い浮かべてみるのも、また街の新しい楽しみかたかもしれません。