前回、銭湯がニュージェネレーションによっておもしろいスペースとなってきていることと、さらにセレクトショップとのプロジェクトまで進んでいること、そして京都と東京のかまるお気に入り銭湯などもお伝えしました。(前回の記事はこちら)
今回は、このムーブメントのきっかけをつくった東京・高円寺の「小杉湯」についてと、銭湯好きの若者達によるメディアチームで銭湯オーナーでもある「東京銭湯」、そして銭湯愛満載の女子6人による「SENTO FOREVER」の活動についてなどをご紹介します。
銭湯ムーブメントの先駆者「小杉湯」
アーバンリサーチとのプロジェクトが本当に驚きだった高円寺の「小杉湯」ですが、そんな取り組みが生まれたのはこれまでに斬新で魅力的な企画の数々が実施されてきたからこそ。地元に愛されながら、いい感じで個性強い人達が集まるカルチャーの場ともなっていて、ますます求心力がアップしている「小杉湯」。
きっと、オーナーが60代の平松茂さんと30代の平松佑介さんの2人という二世代体制だからなんだろうなあ、と勝手に思っています。
創業87年の老舗が、“銭湯の今”の象徴
改めて「小杉湯」の特徴を説明しますと、破風屋根のレトロな外観を持つ創業87年の老舗銭湯で、自然素材由来の入浴剤によるミルク風呂などで多くの人に知られています。健康についてのこだわりが半端なく“温冷交互浴”の聖地とも言われ、青森ヒバやカモミールの日替り湯などアイデアにあふれていて、私達のようなタイプにとってパラダイスの一言。
入ってすぐのところにはギャラリースペースもあり、予約は3年先まで埋まっているという人気っぷり。このあたりは3代目の佑介さんの感性だと思うのですが、番頭をしている女性がイラストレーターだったりもするんですよ。
その塩谷歩波さんは、休職中に出会った銭湯に救われ、銭湯を描いたイラスト「銭湯図解」がSNSで話題となったので見たことのある方も多いかも。とにかく一度行ってもらいたい、東京の今を象徴する銭湯です。
なお、「小杉湯」の他の取り組みは前回記事でも取り上げています。
発想に限界なし!銭湯&銭湯プロジェクト情報
「小杉湯」以外にも、気になっている銭湯情報はまだまだあります。銭湯自体の取り組みや、銭湯好きが始めた銭湯のためのプロジェクトなど多種多様な銭湯に関する情報をお届けします。
銭湯メディア×銭湯プロジェクト「東京銭湯」
銭湯好きな若者が集まった「東京銭湯」というグループは、従来の銭湯オーナーとはまた違ったスタンスと活動の多彩さに、以前から注目しています。銭湯業界の活性化に取り組むことを目的に、株式会社東京銭湯として2015年にスタート。
ウェブメディア「東京銭湯 – TOKYO SENTO –」で銭湯の魅力を若者に発信するほか、埼玉県川口市の「喜楽湯」の運営もしています。銭湯体験をひとつのサービスとして捉え、地域イベントを主催し「喜楽湯」を拠点に地域コミュニティデザインを目指しているとのこと。
銭湯のある暮らしを提案する不動産探しサイト「東京銭湯ふ動産」なんていう、彼らならではのサービスも。銭湯があるからこそ快適な毎日を堪能出来るという、風呂なし物件の新しい価値観も訴求しています。
銭湯×カフェバー「BathHaus」
ネーミングからもこれまでの銭湯イメージを覆したスペースが渋谷区西原にある「BathHaus」です。地域のためのお風呂がある家、をコンセプトに、カフェバーが併設されたこの銭湯は、以前はコワーキングスペースも併設されていました。
今年2月から現スタイルにリニューアルし、新店長は次のコーナーでご紹介する「SENTO FOREVER」のメンバー、林真理恵さんです。バースタンドには、国産クラフトビールとコーヒー、その他お風呂上がりにぴったりなドリンクが。
さらに女子に嬉しいポップでおしゃれな企画も多く、銭湯に行きたくなった時に便利で軽快なオリジナルバッグ「HYPER LIGHT SENTO BAG」というヒット商品も昨年生み出しています。
アウトドアバッグブランド「TAITAI」とのコラボによるこの機能的な銭湯バッグ、ぜひまた販売してもらいたいです。
銭湯プロジェクト×クリエイティブ系女子「SENTO FOREVER」
「BathHaus」の林店長もメンバーなのが、銭湯好き女子による「SENTO FOREVER」です。2017年に昭和女子大学環境デザイン学科4名からスタートした、デザインで銭湯を考えるプロジェクトチームで、現在6名が幅広く活動。
銭湯グッズの世界をもっと広げたい、という想いのもと、銭湯クリエイターズマーケット「湯沸かし市」というイベントを企画、キュレーション、運営していたり、「湯沸かしEMOJI」というSlackで使える絵文字を無料公開したりも。
さすがクリエイティブ系女子ですね。音楽、ファッション、旅行、デザイン、アート、アウトドアなど、銭湯と親和性があって、銭湯好きが潜在しているであろうカテゴリーとどんどん絡み合って発展していきたい、とのこと。彼女達がこれからも沸かしていく好きなこと、とても楽しみです!
銭湯×大量マンガ「富士見湯」
マンガ好きな私にとって、東京昭島市の「富士見湯」も以前からチェックしている銭湯です。
ちょっとしたマンガ喫茶並みの7,000冊ものマンガが揃っていて休憩室でビールやツマミも楽しめるという極楽銭湯。12時から翌朝10時までの都内最長級22時間営業ということにもびっくり。
浴槽におもちゃを浮かべた寿司風呂やタコ風呂デー、朝の青汁無料サービスなど話題に事欠きません。カラフルでキッチュな浴場背景画は必見。なお、この「富士見湯」を様々なアイデアによって2016年に再生させた真神友太郎さんは、西小山の「東京浴場」などのリニューアルも手掛けています。
銭湯巡りにお得な共通入浴券
また、前回・今回ご紹介した都内の銭湯巡りや銭湯旅をしたいと思った方には、この「東京都公衆浴場業生活衛生同業組合」の共通入浴券の回数券がお得でオススメです。都内の多くの銭湯で使用出来ますので、行ってみたい銭湯を検索してみてください。
フリーペーパーとして評価が高い情報誌「1010」のアーカイヴやWEB版もこちらのサイトで楽しめます。
それから、銭湯を使い放題で泊まれるというサービスをしているところも。路地散策が楽しい谷中に残る銭湯「朝日湯」で、隣接する築100年の古民家に最大10人のグループなどで宿泊できちゃいます。
ビジュアルでも楽しいデザイナーズ銭湯
最後に、銭湯専門の建築士が手掛けた銭湯をまとめた本「銭湯空間」の情報も。
デザイナーズ銭湯と呼ばれるカテゴリーがあって、従来持つ機能性を大事にしつつ画期的なデザインを組み合わせた銭湯群のこと。渋谷の「改良湯」など都内16のデザイナーズ銭湯が豊富なビジュアルで紹介されています。
銭湯に関するコラムも楽しいですよ。
東京だけでもこんなにバラエティに富んだ銭湯が増えていることを改めて知って、銭湯を組み合わせた週末都内旅を色々考え始めています。隣県へ行くことを避けないとならない状況の中で、楽しい計画をと!
また、銭湯だけでなくサウナやスーパー銭湯もまた違う進化をしていますので、近いうちにそういった特集もしてみたいと思っています。サウナとコワーキングスペースが融合した施設なんてところも出現しているみたいですよ。