今でこそかなり肌は強くなりましたが、幼少時はともかく肌が弱く、毎週のように皮膚科に連れていかれました。夏になれば、汗で首の周りが赤くあせもになって、かゆがっていた記憶があります。
この年になってもいまだに汗が流れると耳の下から首の前側がかゆくなり、皮膚科で薬を処方されています。肌から強酸でも出ているんじゃないか、とぶつぶつ言いながら、風呂上がりにパウダーをはたいていたら、昔のことを思い出しました。
ふと、よみがえった「練り白粉」の記憶
私は下町生まれで、周りには銭湯がたくさんありました。外では、ステテコのおじいさんが床几(しょうぎ)に腰かけて囲碁や将棋をうっている、ザ・昭和な風景がみられたものです。わが家にお風呂はありましたが、月何回かはあちこちの銭湯に行ってました。だいたい、銭湯の帰りに蕎麦屋か中華屋に寄り、一杯やっている大人たちの横で、ご飯を食べさせてもらうのがローテーションでした。
そんな風景が脳内によみがえり、ふと、練り白粉(ねりおしろい)のことを思い出したんです。銭湯で売っていた青い小瓶。ふたをあけると、ふたの先がへら状になっていて、中にドロドロした白い液体が入っていました。
母親から、それを風呂上がりの首やひじの内側にべたべたと塗られていました。乾くと真っ白になって、そのまま外に出て歩くわけです。銭湯から出ると、首を真っ白に塗られた子どもたちが何人もふらふらと歩いている姿は、今から考えると奇妙な光景でした。
あの白い液体は何だったのか?今や入手困難に
さて、記憶に残っている練り白粉とはどんなものだったのか、ネットで検索してみました。瓶の色は濃い青だったので、おそらくこの「アセレス練りパウダーD3」だったのではないかと思います。
▲手に入れられないため、イラストにて「アセレス練りパウダーD3」
メーカーを見ると、大阪のアセレス本舗藤勘商店というところが作っていました。主成分は水と酸化亜鉛ですね。検索したら、2011年で製造中止になったというTwitterを見つけました。残念ながらもはや入手できず。
アセレス以外にも販売されていた練り白粉
類似品に、ニード化粧品本舗田中善株式会社の「ツースター クリームポーダー」という製品もあります。こちらも水と酸化亜鉛と香料です。HPを見ると、ここは米ぬかなどを使った化粧品など渋いラインナップですが、「ツースター クリームポーダー」は見当たらないので、もう作ってないのでしょう。
他にも「煉天瓜粉 タイセー煉ポーダー」という製品がありました。どれも、製造販売中止です。
▲「煉天瓜粉 タイセー煉ポーダー」
さらに、他の商品名を見つけました。ブログで「アセボン」をいう名前が出てきたので検索するとまたもや販売中止で、富山の新新薬品興行株式会社が「新アセボンS」というものを販売していると出てきたので、会社のHPを検索すると現在は見当たらず・・・。
他のサイトに掲載されていた「新アセボンS」の効能を読むと、
- かゆみ止め成分(ジフェンヒドラミン)と局所麻酔成分(リドカイン)が素早くかゆみを鎮めます。
- 酸化亜鉛が患部を乾燥させ、サラッとした使用感を与えます。
- 肌に優しい低刺激性・非ステロイド系の軟膏剤ですので、安心してご使用いただけます。
※本剤にステロイド成分は配合されておりません。
とありました。やはり酸化亜鉛が使われていて、きっとこれまでの練り白粉と同じような消炎作用とかゆみをおさえて、肌を乾燥させるレシピの進化系ではないかと想像します。でも写真を見たらチューブ状で、もうあの懐かしい瓶のノスタルジー感はない、ただの薬って感じでした。
首真っ白けの原因「酸化亜鉛」の機能は?
液体の白色は酸化亜鉛から来ているのですが、どんな機能があるのでしょう。
調べると、紫外線散乱性、光触媒性などがあり、紫外線を防御し、消臭・殺菌剤に使われています(紫外線散乱剤についてはこちらの記事をご覧ください)。透明性、安定性に富み、収れん作用、消炎作用があり、UVケア製品などに用いられるそうです。
それで思い出したのが、昔チェンマイで買った「タナカ」という黄土色の木の粉です。また、ミャンマーでは、天然素材の化粧品として、この木の粉を溶いて顔に塗る美容の習慣があります。
タナカの粉は日焼け止め効果もあり、ニキビ跡やシワ、美白にいいと、彼らにとってはいいことづくめのメイクアップ商品ですが、現地の人がペースト状のタナカを顔に塗っている様子はかなり奇異な印象です。
▲タナカを塗っているイメージ
昔の私たちがアセレスで首を真っ白にして歩いてる様子も、ご近所同士とはいえきっと同じくらい変かも・・・(笑)