古代中国の自然哲学「三伏」の話。その考え方や食べるといいものとは?

今年は梅雨がやたらと長く、やっと梅雨が空けたと思ったら、もうお盆の時期ですね。みなさんは、「三伏(さんぷく)」って聞いたことありますか。この暑ーい夏に負けず、栄養をつけて乗り切ろうという先人の知恵を感じる、毎夏3回のお楽しみスペシャルデイズなのです。

古代中国から伝わる「三伏」という考え方

古代中国の自然哲学であり、宇宙観である陰陽五行説に基づき、夏の最も暑い時期である夏至以降の第三庚(かのえ)の日を「初伏(しょふく)」、第四庚の日を「中伏(ちゅうふく)」、立秋後の最初の庚の日を「末伏(まっぷく)」を呼び、併せて「三伏」といいます。

2020年の「三伏」は下記の3日間。

初伏 7月16日(木)
中伏 7月26日(日)
末伏 8月15日(土)

今日、8月15日がまさにラストデイ。

私が「三伏」を知ったきっかけ

そもそも、かまるがなぜ「三伏」を知ることになったのか。

それは、中国からではなく、韓国との長いご縁から始まります大学時代に仲良しの留学生がいて、毎年ソウルに遊びにいっていました。その後、仕事で韓国とのお付き合いが生まれ、その仕事仲間の方と親しくなったご縁で、公私含めかれこれ100回は渡韓しています。たまたま夏の時期に韓国にいると、友人が「今日は三伏だから、〇〇〇を食べに行かないと!!」とあちこち連れてってくれたのです。

韓国では、暑い夏を乗り切るために、体にいい肉料理を食べます。日本で暑気払いに土用の丑の日に、滋養をつけるぞとウナギを食べるのにとっても似てる感覚です。韓国の「三伏」も日本の「土用の丑の日」も、古代中国の自然哲学であり、宇宙観の「陰陽五行説」に基づく暦により決められた日です。

正直あまり難しいことはわかりませんが、酷暑の時に体力を維持するために滋養強壮の食べ物を摂ろうという先人の知恵が、「陰陽五行説」から来てるなんて!こういう時、私はアジア周辺は中国の文明・文化の影響を受けて私たちは暮らしているんだなあと、アジア人としてのかまるを意識して、わくわくするんです。

陰陽五行説とは?

では「陰陽五行説」とは何か、簡単に説明します。

森羅万象は「陰」と「陽」の二つで成り立っていると解釈した陰陽論と、万物は「木」「火」「土」「金」「水」の五つの基本要素から成り立っていると考える五行説が、古代中国で融合しました。

先ほど、「三伏」の説明で庚(かのえ)の日とありましたが陰陽五行説に基づき「十干(じっかん)」という考え方があります。通常、十干と十二支を併せて、年日を表すことが多いですが、あまり現代の我々にはなじまない言葉です。

ちなみに、「庚」は音読みで「こう」なのに、なぜ「かのえ」と読むのかわからなかったのです。上の画像を見ると庚のところに「金」の文字がありますね。さらに「陰」と「陽」を「弟」と「兄」と考えると、「庚」=「金の兄(かのえ)」になります。次にある「辛」=「金の弟(かのと)」と読むのです。

さらに、五要素の「火」は夏を表し「金」は秋を表します「火」は「金」を溶かすという考え方から、夏の気が強くて秋の気配を伏せるということで、この時期の「庚」の日は酷暑になるという考え方なんだそう。酷暑で体のダメージを補修するために、滋養のあるものを「三伏」に食べようという慣習になりました。

日本ではウナギ、韓国ではサムゲタン

韓国では、スペシャルデイ「三伏」に何を食べるのか?サムゲタン(参鶏湯)やユッケジャンなど鶏肉の料理か、またはポシンタン(補身湯)、要は犬肉の鍋を食べに行きます。

私は、「三伏」以外の日にポシンタン専門店に連れていかれました。犬肉は韓国では精力がつくから男性が食べに行くと言いますが、声によくスタミナがつき即効性があるからと、歌手や俳優も食べる方がいます。一緒に食べた日本人の喫煙者は、翌日の声に全くひっかかりがなく、手の汗が止まらなくて驚いてましたよ。でも一日で戻ったそうです。だから、歌手が公演の前日に食べると聞いたのも納得でした。

サムゲタンは、ひな鳥のお腹に高麗人参、棗、黄耆、もち米、ニンニク、松の実、栗などをつめて煮た薬膳料理です。

専門店では日本の釜めしの器に似た土の容器に入れてぐつぐつ状態で出されます。烏骨鶏のサムゲタン、アワビ入りなど高級バージョンも何度か食べましたが、正直私は普通のサムゲタンで十分満足しました(笑)。スープもさっぱりタイプやドロっとしたタイプなど、お店によってテイストが違うので、食べ比べてお好みを見つけるのがいいです。

なお、高麗人参は体をとても温めるので、中医学の考えで「火」が強いタイプの私は、高麗人参を食べすぎると逆にのぼせてしまうので注意です。

通常、一人で1羽出されるので量も多いし、高麗人参を全部食べると心臓がばくばくしてしばらくすると落ち着き、確かに元気になるのですが、お店によって効きすぎてちょっと焦ります。

サムゲタンを作ってみて…

なお、韓国人の友人と一緒に作ったことがありますが、鶏肉のお腹を丁寧に洗ってきれいに処理できれば、あとはじっくり煮込めばいいので、材料がいいものを揃えられればそんなに難しくないという手ごたえでした。が、日本での問題は小ぶりでいい感じのひな鳥が入手しづらいことです。冷凍物になりやすいので、もっぱら私は骨付きのぶつ切り鶏を鶏肉専門店で買って、サムゲタンもどきを作ってます。そのほうがみんなで分けられるし手軽。ポイントは土鍋でじっくり炊くことですね。

でも今日は、韓国の友人がコロナ救援物資と称して、あれこれ食品を送ってくれた中にレトルトのサムゲタンがあったのでそれをいただきます。

まだ高麗人参の冷凍ストックもあるので、ぶつ切り簡単サムゲタンを作ったら改めてご紹介しますね。

ウナギが庶民の口に届きづらいお値段の昨今、疲労回復、夏バテに鶏肉をぜひ。台湾も、「マーヨージー(麻油鶏)」という鶏肉スープをよく食べますが、鶏肉は庶民の味方ですね。

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