柿渋の伝統的製品「渋団扇」の歴史と、発展し続ける「来民渋うちわ」について

  • 2020年11月1日
  • 2020年11月1日
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新型コロナウイルスへの不活化効果のニュースをきっかけに「柿渋」の特集をはじめてみたところ、様々な柿渋の用途がある中で、渋団扇(しぶうちわ)という伝統プロダクトに興味が深まりました。中でも、「来民渋うちわ」の栗川商店が展開してきているアクティブな活動内容とその分野は私の琴線に触れることが多く、知れば知るほど気持ちが高まっています。

そこで今回は、アマビエ絵柄の「来民渋うちわ」でも注目されている栗川商店の幅広い取り組みを中心に、渋団扇の歴史などについてもわかる範囲でお伝えしたいと思います。

昔ながらの愛用品「渋団扇」とは?

渋団扇とは、竹の骨に和紙などを貼って柿渋を塗り重ねた団扇です。主に台所などで使用され、かまどの火に風をおくるために使われるなど、昔は家庭での必需品でした。

柿渋により水や虫に対する耐久性があるので、今でも、うなぎや焼き鳥を焼く時や、鮨飯を冷ます時にプロが使用していたりも。また、私は歌舞伎が好きなのですが、雨の音を演出するために渋団扇が用いられているそうです。かつては小豆や小石などをひもでつけていて(現在はビーズなど)、渋団扇を振ることにより番傘や板屋根に雨粒が打ち付けられる雨音が再現できるとのことです。

渋団扇の歴史

渋団扇の歴史をたどろうとすると、国内の団扇生産量トップシェアの香川県丸亀市と、「来民渋うちわ」の熊本県山鹿市の情報から紐解くことになります。

元々、生活道具としての用途が中心なので起源など正確にはわからないようですが、1600年に、丸亀の旅僧が九州で一宿のお礼に団扇の製法を伝授したのが、熊本「来民渋うちわ」の始まりといわれています。そこから考えると、丸亀団扇の技術は江戸時代初期までには確立していたようです。

1633年に、金毘羅参りのお土産として天狗の羽団扇にちなむ朱色に丸金印の渋団扇(男竹丸柄団扇)作りを考案。その後、丸亀藩が藩士の内職に団扇作りを奨励したことなどから、丸亀は団扇産地の基盤を築いたとのことです。技術的には、竹の骨と和紙の間に漁網を入れる工夫がされて耐久性が高まりそれが丸亀団扇の特色になり、時代を経た1965年頃からはプラスチック素材によるポリ団扇の製造を開始。近年は全国的にも本来の竹の団扇の生産量は激減し、さらに渋団扇は量的にはごくわずかの存在になっています。

現在、丸亀にも渋団扇を製造するところは一部残っているようですし、埼玉県越生町の越生渋団扇や、岐阜市の岐阜渋団扇などもありますが、最もメジャーな存在は「来民渋うちわ」です。

創業130年以上、自家製柿渋にこだわる栗川商店

1889年創業の栗川商店は、熊本県山鹿市で「来民渋うちわ」を生み出している唯一の会社です。団扇の骨組みの竹材には、阿蘇外輪山の山林に繁茂する真竹を使用し、貼りつける紙は八女和紙を中心に県内外のものを使い分けています。

昔は近くを流れる菊池川流域で和紙作りが盛んだったそうで、そういった環境が整った地ゆえに山鹿では最盛期の1935年には年間600万本を生産していて、35軒の製造業者があったとのこと。

さて最大の特徴である柿渋引きについてですが、栗川商店では創業以来、自家製の柿渋にこだわっています。毎年8月初旬頃、山鹿産の青い未熟なガラ柿(豆柿)を潰して水に漬けて、上澄みを濾して搾った生渋を発酵・熟成させて柿渋を作るのだそう。

▲青柿イメージ

そして、渋団扇の仕上げに使えるようになるには3年以上が必要とのこと。柿渋の効果については以前の記事でもお伝えしましたが(記事はこちら)、渋団扇は和紙に柿渋を塗ることで防水・防腐効果をもち強度が増しタンニンの働きで防虫効果も得られます。また、経年変化を楽しめることも魅力で、年が経つにつれて深みをおびた茶色になっていきます。

斬新な活動とプロダクツを生み出し続ける姿勢に脱帽

私が素晴らしいと感じたのは、栗川商店が新しい試みを常に続けているその姿勢とセンスです。県内の表現者による渋団扇のイベント開催や、子どもの誕生時に贈るオリジナル商品としての命名団扇という発想などなど、話題性に事欠きませんし、何より文化に対しての意識の高さが素敵です。

栗川商店が、和傘の復活や、山鹿の八千代座の復興に取り組んだことも今回初めて知ることができて益々興奮。

というのは、訪れてみたいと以前から思っていた希少な芝居小屋の八千代座であり、そこに歌舞伎座で見かけたことのある「来民渋うちわ」がつながっていたからです!かつて八千代座で行われた坂東玉三郎や市川海老蔵の公演をきっかけに、なんと歌舞伎役者さんの定紋入りの「来民渋うちわ」が商品化されたそうで、その後には歌舞伎座が描かれた商品も発売されました。

セレクトショップ・コラボ商品にも注目

栗川商店の「来民渋うちわ」は、モダンでアートなプロダクトとしても大変注目されています。最新ニュースとしては、セレクトショップのアーバンリサーチKYOTO地下1階フロアで2020年11月5日まで開催されている、けみ芥見の個展でのコラボうちわです。アーバンリサーチからの依頼により「いにしえの遊女 うちわ」というアイテムを製作し、会場とオンラインショップで販売されています。

〈Chemi Akutami EXHIBITION  -七千転び八千起き-〉
会期:2020年10月23日(金)〜11月5日(木)
会場:アーバンリサーチKYOTO 地下1階フロア
営業時間:11:00〜19:30
入場料:無料

グローバルに活躍している芸術家、けみ芥見とのコラボが実現したのは、アーバンリサーチとの以前からの取り組みがあってのこと。それが、日本各地の企業やクリエイターによって作られるローカルコミュニティとともにその土地の魅力を再考し発信する、アーバンリサーチによるローカルコミュニティプロジェクト、「JAPAN MADE PROJECTです。このプロジェクトの一環として、2018年と2019年には、アーバンリサーチ・オリジナルの仏扇渋うちわと栗川商店の仏扇渋うちわがアーバンリサーチの一部ショップとオンラインショップで販売展開され、夏シーズンの話題となりました。

コロナ禍の平和を願う「来民渋うちわ」も登場

そして、コロナ禍の2020年5月には、栗川商店からアマビエ絵柄の「来民渋うちわ」が登場しました。昔から災厄をはらうといわれる団扇と、疫病退散のアマビエ、そして防虫・防腐効果がある柿渋という三つの力がそろったこの商品。そこに、柿渋が新型コロナウイルスへの不活化効果があるという強力パワーも、今回加わった気がしますね。

アイテムは、「来民渋うちわ」アマビエ絵柄のモノクロとカラーバージョンを基本に、アマビエファミリーのキャラクターによるモビールタイプなども展開されていて楽しいです。

今回、柿渋成分を活用した除菌スプレー製品や塗料などもご紹介する予定でしたが、どうやら柿渋を使った除菌・抗菌新製品がいくつかの企業と研究機関で急ピッチに開発が進んでいるようです。かまる新聞の使命としては、そういった情報を入手した時点ですぐに発信したいと思っていますので、しばらくお待ちください。

また、山鹿市や隣接している福岡県八女市には、栗川商店の他にも面白いスタイルの地域活性化活動をしている人たちがいるので、そちらは年内中にご紹介するつもりです。

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