「漆喰塗料」が新型コロナウイルスを不活化する!最新ニュースと漆喰活用事例

かまる新聞が以前から注目してきた「漆喰」について、興味深いニュースが舞い込んできました。関西ペイントが長崎大学感染症共同研究拠点の安田二朗教授と実施した実証試験で、2020年10月、同社の漆喰塗料の新型コロナウイルスに対する不活化効果を確認したとの発表です。

漆喰とは、消石灰(水酸化カルシウム)を主原料とした左官の塗り壁材ですが、その強アルカリ性の消石灰が新型コロナウイルスを不活化させるというのです。

そこで、漆喰とはどういったものなのかをおさらいしながら(漆喰と 珪藻土 についての以前の特集もそれぞれご覧ください!)、今回の画期的な発表内容の詳細と、各社で漆喰が活用されている最新事例もご紹介していきます。

お城や神社仏閣、土蔵で使用されてきた伝統的材料「漆喰」

漆喰とは、昔から使われてきた伝統的な建築材料で、日本でも古くからお城や土蔵、神社・仏閣などで使用されてきました。木造建築の多い日本では、燃えにくい漆喰を塗ることが防火対策にもなっていたそう。

▲倉敷美観地区

約1,300年前に海外から日本に伝わり、その後独自進化を遂げた和漆喰は、平らにムラなく仕上げることや薄く塗ることなど、左官職人の技術が求められるように。そのために混ぜ合わせる素材などの工夫が進み、職人たちが技巧をこらす芸術として評価されることになったそう。有名なのは、倉敷の美観地区や姫路城、金沢城の漆喰壁などですが、以前記事にご協力いただいた水戸市の根子左という会社は、現在水戸城復元でその左官技術を発揮しているそうです。

抗新型コロナで注目の消石灰とは

さて、今回注目されている消石灰(水酸化カルシウム)について少し説明したいと思います。消石灰をどうやってつくるかというと、石灰石を焼いて水を加えることによります。

石灰というのは、石灰岩というサンゴやアンモナイトなどといった海の生物の死骸が化石化し、地殻変動によって地上に出てきた鉱山からとれるもの。そう、石灰とは海から生まれた自然の材料なんですね。そんな石灰を壁に塗れるように、消石灰に海藻、わらや麻スサなどと混ぜたものが日本の漆喰、というわけです。

漆喰の新型コロナウイルスに対する不活化効果のことに話しをもどすと、実験室で漆喰塗料に接触した同ウイルスは、5分で99.9%以上が不活化したとのこと。ウイルス研究分野における第一人者である長崎大学の安田教授は、漆喰の潜在能力の高さを多いに感じたそう。新型コロナ対策用に漆喰塗料を様々なものに塗布する具体例として、医療や老健施設などにおける衛生環境の向上可能性をコメントしていました。

漆喰塗料の活用アイディアいろいろ

関西ペイントは2007年に漆喰塗料の開発に着手し、「アレスシックイ」の製品名で漆喰塗料を販売するとともに、抗菌・抗ウイルス効果のデータを蓄積してきました。

2019年11月に発売した、漆喰塗料を塗布したシート・テープ製品は、元々は抗インフルエンザウイルス効果を期待して商品化したもの。2020年11月には、さらにウイルス対策マット、防災用の段ボールベッドなどへと製品の幅を広げる予定とのことです。

建築会社だけでなく、ウイルス対策に意識の高い企業や飲食施設などからも注目されること必至です。

AVEDAコンセプトサロンで漆喰ウォールを採用

漆喰ですが、では私たちが訪れるスペースではどんなところで使われているでしょうか?

そんな一例が、2020年9月にオープンしたAVEDA(アヴェダ)のコンセプトサロン「FACE DECO AVEDAです。高級感のある都会的で洗練された空間において素材に徹底的にこだわった結果、ウォールには日本の伝統的自然材料である漆喰を使用しています。

ご存知の通り、AVEDAとはオーガニックを可能な限り追求しているブランドで、1978年の創設以来、ピュアな花々や植物エッセンスによるヘアケア、スキンケア、ボディケア製品等を展開し、上質なアロマとその品質の高さで世界中のプロフェッショナルに愛されています。その世界観をダイレクトに体感できるのが、所沢駅直結の商業施設、「グランエミオ所沢」内にオープンした、このサロンです。

漆喰で描かれた「鏝絵」が魅力のリトリート宿

東洋史研究家のアレックス・カーがプロデュースするリトリート宿「ヤマウラステイにも、漆喰の魅力を感じられる棟があります。2020年10月、長野県茅野市にオープンするこの一棟貸しの古民家宿泊施設の中の「花兔(はなと)」です。

4タイプ(定員2名〜6名)ある古民家の中で、「花兔」から見る景色にアクセントを与えているのが蔵。壁を塗る漆喰を使って鏝(こて)で描いたこちらの鏝絵は必見です。

なお、「ヤマウラステイ」は2021年1月31日までプレオープン期間のため、通常料金の15%引きの宿泊料金となり、さらにGo To トラベルの対象施設でもあります。奇跡的に守られてきた隠れ里の古民家で、ゆったりと真の贅沢な時間を過ごせそうです。

約170年の土蔵をリノベしたショップ&多目的スペース

長野県からもう一つ。少し前に信州を巡った際、上田市の中心地で古い蔵をリノベーションしたお店を発見しました。白く美しい漆喰が、風情ある上田の街にとけあっている「石森良三商店です。

約170年前の土蔵が、1階をショップに、2階は落ち着きのある多目的スペースへと2019年に再生され、中庭も含めてとても素敵で温かみもあります。今回は漆喰ということでご紹介しましたが、ものづくり系作家さんの展示やイベントなどにも積極的な、誠実でアート感もあるスペースです。こちらについては、上田への旅記事の際に、詳しくご紹介したいと思います。

柿渋に続き、漆喰に新型コロナウイルスへの不活化効果があることが確認され、日本で古来から使われているものゆえに今後の期待がとても高まっています。ただ、漆喰の空間で暮らすことで、接触感染リスクを減らすことができる、ということではもちろんありません。漆喰の自然素材ならではの魅力と左官技術による美しさが、今回ご紹介した各スペースから多少とも感じてもらえると嬉しいです。
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